7月1回目のテーマは『四角』で、全クラス“押し寿司”を作りました。
前回の『ケルンブロック』が登場し、四角という形でつながっているという意識を持てるような導入をして、
お料理がスタートしました。
今回感動した出来事は、年中組のT君の包丁さばきでした。
5月にかぼちゃグラタンを作った時には、
まだまだ見ていて冷や冷やする包丁の扱い方で、
大人が補助して一緒にしないと危ないかなという感じでした。(年中さんだから、普通に考えれば当たり前ですよね。)
当然、僕にはそのイメージがあったので、『T君一緒にやろっか』と声をかけ、
T君が持っている包丁を一緒に握ろうとすると、
T君はすかさず『ひとりでできる。大丈夫。おうちでやっとるけぇ。』と言い、
僕の手を振りほどいて触らないでというアピールをしてきました。
僕は心の中で、『いやいやT君それは危ないよ!大きな怪我になったら大変だ!』と思い、
強引に手伝おうかと思いましたが、
『いや待て待て。T君がこう言っているならまずはそこを大事にしないと。
やってみて危なかったら手伝おう。』と思い直しました。(この間約1秒!笑)
そして、1人で包丁を扱うT君の姿を見て、びっくりしました!めちゃくちゃ上手になっていました!!
もう、大人のお手伝いは全く必要ありません。包丁の危険性をしっかり認識し、注意を払いながら
きちんと左手を食材に添え、包丁を持つ右手はスムーズに確実に食材を下まで切り落としていて、
6週間前とは全く別人のT君がいました。
『僕、おうちで包丁やった。』『僕、包丁できる』と、T君はずっと言っていました。自信を持っていました。
僕は、この6週間の間に彼の中で何が変わったかを考えました。この短期間に今までなかった能力が
急激に発達したという事は考えにくい、であれば、
今まで眠っていた能力が、“経験によって引き出された”と考える方が自然です。
僕は想像をしてみました。
5月にアトリエで包丁を使った後、T君は家に帰ってお母さんに『僕包丁やりたい!』と言ったのかもしれない。
もしくは、アトリエで包丁を使ったという事を聞いたお母さんが『おうちでもやらせてみよう』と思い、
積極的に包丁を使わせてあげたのかもしれない。
いずれにしても、ご家庭で包丁を使う環境を作ってあげて、経験させてあげた事によって、T君の能力が
引き出され、そして自分に対する自信が生まれたのだと思いました。
この事から、僕たちは大切な事を学ぶことができます。
危険な包丁は、大人の許可がない限り子どもは絶対に使うことができません。
もちろん、自由に使わせてしまうと大きな事故になりかねないので細心の配慮は必要です。
しかし、そういった事も含め、大人がしっかり“経験できる環境”を作ってあげる事こそ、
大切な意味がある事だと思います。
(もしかすると、文字や数字などの勉強を教える事よりも、“生きる力”という意味では、そうであるかもしれません。)
今回の活動の中でも、他にもそう思えることがありました。
小学4年生の女の子2人だけのクラスがあり、とにかく手際がよく早く調理が終わりました。
本当は、“片付けまでが料理活動”と思っていますので、
『じゃあ洗い物も手伝って。2人が洗ったら先生がすすぐから。』と提案すると、2人の女の子は『OK!』と言って、
使った調理器具、食器を時間内に全て片付ける事ができました。
すごく手際がよかったことにびっくりした僕は、『おうちでやってるんでしょ。上手だね。』というと、
『全然やってないよ。ママしかしない。』といいました。
確実に戦力(笑)になるこんな手際がよい子にお手伝いしてもらわないのは、もったいないですよね。
“子どもの能力を引き出す環境づくり”を意識してみて下さい。
『信じてみる』、『任せてみる』、『やらせてみる』 大切なことですね。